2006年12月の日記
12月1日(金)の夜

 昨夜はほぼ徹夜で博士論文の進捗分を仕上げて、今朝の9時までにアドバイザー4人のメールボックスにメッセージを添えて提出(オフィスがキャンパスの三ヶ所に別れているため、結構歩き回る…)。一応「今週中」ということにはなるか。とりあえずもうこれで今学期は徹夜するようなことは無いでしょう。とはいえもちろん気は抜けません。この段階になったら「日々是決戦」です。

 最近思うことがあって研究のあり方について考えています。やっぱ研究テーマは一般の人にも興味をもってもらえて、かつ社会の役に立つものであるべきではないかと。今更ながらの「大二病」(「中二病」から着想を得て命名)的な「青臭い」考えだとは思いますが、それこそ新書で売り出してベストセラーになりうるようなテーマがやりたい。もちろんかといって学術研究としての水準を落とすべきではない。ただ今まではあまりにも「理論的関心」に基づいて研究していたのを、若干「実践的関心」にシフトしても良いのではないかと思うのです。「前提を緩めてより現実的な効用関数を作りました」、「こっちのモデルの方が統計学的により適切です」も研究者的には面白いですが、それ以外の人からすると「政治学」として理解不能でしょう。それよりももっと例えば「有権者の政治への影響力が保証されるためには何が必要か」とか、「社会において弱者に対する福祉政策に関する合意が形成されるための条件は何か」とか、「政治家が汚職をしないための政治制度は何か」などの実践的な関心でもって研究を進めるべきではないかと。
 …えーっと、何のオチも無い「チラシの裏」すいません。昨夜寝てないもので…。

12月4日(月)の夜

 今日キャンパスを歩いていると、オースティンローカルのFox Newsのクルーに遭遇。そしてその中に僕が日ごろから気になっているキャスターのJenni Leeを発見。テレビに出ている人の常ですが、やはりテレビよりも実物の方が数倍美しい…。握手してもらおうかと思いましたが、僕はシャイなので結局断念しました。

 今日のニュースによると国家公務員「フリーター枠」断念とのことですが、代わりに「職歴を問わず、29〜40歳の年齢制限だけを定めた採用枠を08年度から設ける」とのことです。これは(僕も含めて)世の「高齢院生」には朗報かも…。

12月7日(木)の夜

 ここ数日調子が悪いです。昼も夜も常に眠いのに眠れない。そして常に空腹を感じるが、実際は空腹ではない…。何とかならないものか。

 TAのクラスの試験がおとついありました。前にも書いたとおり今回は完全ベイズ均衡までの均衡概念に加えて有限回、無限回の繰り返しゲームも含まれるようになったので苦戦する人が続出。試験時間(75分)終了の時点で半分以上がまだ教室に残っていました。こういう事態を見越して、本番の試験とほぼ同じ出題パターンのサンプル試験と、10ページにも及ぶそのかなり詳細な解答を配布していたのですが、それでもダメな人はダメだったようで、約70人中満点が3人いる一方、半分取れなかった人も続出しました。ただ、平均点としては70点くらいでそう悪くありませんでいしたが。
 これでTAの仕事は終わりかと思いきや、まだ試験を欠席した人のための追試があります。詳細は書けませんが、これがちょっとややこしいケースで気が重いです…。

 今日はひょんなことから、UT政治学部の博士課程を受験を考えているアメリカ人の相談を受けることになったのですが、我ながら自分の口から出ることがプログラムについてネガティブなことばかりで辟易しました。彼は果たして受験するのだろうか…。

 現在夕方6時過ぎで、4時過ぎに夕食をとったばかりなのにもうお腹が空いてきました。コンビニでポテチとコーラでも買って来ようか。

12月9日(土)の夜

 金曜日には4人のアドバイザーに会って、博士論文のフィードバックをもらいました。概ねポジティブなもので、来学期の博士号取得に向けて弾みがつきました。良いジャーナルにパブリケーションも狙えるのではないかとのこと。とりあえず今学期はこれでだいたい終わった感じがします。今日は久しぶりにリラックスして図書館で松本清張の小説を借りて読みました。でも実はTAの仕事で気が重いことがまだあるのですが…。

12月14日(木)の夜

 前の日記で「今学期はこれでだいたい終わった感じ」と書きましたが今週も結構忙しかったです。TAをしているクラスでは、メンタルな病気をもっている学生がいて、試験を3回とも受けず、通算10回以上ドタキャンを食らうなど紆余曲折を経つつも、ようやく今朝全ての試験を受け終えてくれました。成績の提出期限ギリギリです。いくら病気といえどもそもそもこんなに何回もチャンスを与える必要は無いと思うのですが、一度学生からとても理不尽な理由で訴訟を起こされたことのある先生の方針としては、後々面倒なことにならないように極力試験を受けさすようにとのことだったのです。そのおかげで大変だったのは僕です。試験を向こうの指定通りに設定しても、一向に現れない。そのたびに待ちぼうけを食らいました。病気は仕方ないとはいえ、人に迷惑をかけるのは最悪だと思います。しかもそれが当然とばかりに、申し訳無さそうな様子も、感謝する様子も無し…。全く理不尽なものです。

 その他には一応論文もやっていて、学外のアドバイザーにもこれまでの分を印刷して郵送しました。別にメールに添付でも良いのかもしれませんが、結構な量なので、確実に読んでもらうためにはハードコピーを送った方が良いのではないかと思った次第です。博士論文は1ヶ月後を目標にとりあえず完成させたいと思っています。

 オースティンはここ数日異常に暖かく、今日などは20℃前半まで気温が上がりました。そのためかどうかは知りませんが、モールに行ったところどの店でもヘビーな冬物の服がすごい値下げされていました。ということで年末日本に帰ることを考えて、J.CREWでウールのセーターを購入。

 今、オースティンローカルで話題になっていることとして、ウォルマートの出店があります。以前からオースティンにはいくつかウォルマートはあるのですが、いずれも割と郊外でした。ところが今回は中心部とは言えないまでも割と以前から開けている地域にあるモールの敷地にできるとのこと。それに対して、近隣住人による出店反対の署名活動が行われています。しかし出店を規制する法的根拠はありません。住人の言い分によれば、付近の交通渋滞が問題とのことですが、僕が見るところ付近の道路は十分に広く、またそもそもそんなに閑静な住宅街というような所では無いので、これはそんなに大きな問題であるとは思えません。要するにウォルマートに対する生理的嫌悪か、あるいは住人のフリをした小規模ビジネスの扇動ではないかと思います。オースティンには"Keep Austin Weird!"をスローガンとする、オースティンをオースティンたらしめているローカルビジネスを大切にしよう、という運動があり、ウォルマートなど全米の巨大チェーンを地域の独自性を失わせるものとして批判しています。

12月18日(月)の夜

 昨日今日と、僕の同志社の後輩でテキサスA&M大学の政治学博士課程のMくんの住むカレッジステーションに行っていました(彼のアメリカでの就職決定祝い会)。日曜日はたまたま土曜日からオースティンに来ていたテキサスA&Mの友人の車に乗せてもらって朝10時にオースティンを発ち、昼の12時にカレッジステーションに到着。まずはGeorge Bush Libraryに行きました。この図書館は現在のブッシュ大統領の父、ブッシュ・シニアを記念して建てられたpresidential libraryで、ブッシュ・シニア政権の公文書を研究者に対して公開している他、政権の業績およびブッシュシニアの経歴についての展示があります。ブッシュ・シニア政権の主な業績としては湾岸戦争が第一に来るようで、それに関する展示がとりわけ充実していました。エントランスには、図書館建設のための大口寄付者の名前が刻まれたパネルがあり、その中にはやはり湾岸戦争でアメリカによって解放されたクウェートの政府名前がありました。またクウェート以外の政府では唯一、日本政府の名前がありました。湾岸戦争の多国籍軍の展示では日本は当然全く含まれておらず、わざわざ「日本はカネだけ出した」と書いてあるくらいなのに何とも皮肉なもんです。あとなぜかロバート・ケネディの名前がありました。下の写真はブッシュ図書館。

 2時間ほど一人で図書館を見学後、Mくんと落ち合い、図書館と同じ敷地内に併設された政治学部の建物を案内してもらいました。あり得ないくらい豪華でした。おそらく設備の面ではアメリカの大学の政治学部の中で五本の指に入るのではないでしょうか。まあ土地の広さ、安さという要因も大きいと思いますが、今学期から新しい建物に移ったのに、個別のオフィスから院生タコ部屋へとランクダウンしたUT政治学部とは比べようもありません。
 ローカルのカフェでコーヒーを飲んだ後、今学期からassistant professorとしてA&Mに赴任したKさん夫妻の豪邸に。同じく今学期からA&Mの政治学部博士課程に来たNさんも交えて、手巻き寿司を頂きました。途中、ノーステキサス大学の前田さんの電話での参加もあったりしつつ、会は2時近くまで続きました。Kさんの含蓄あるお言葉の数々は大変タメになりました。またKさんもMくんも非常に大きな野望をお持ちのようで、僕としてももっと高い志を持つべきなのかなあと感じました。その晩はMくんの家で一泊。

 今朝は隣町のグレイハウンドのバスディーポからオースティンへの帰途に。途中ウェーコという街に寄り、Dr.Pepperミュージアムでレアな、本物のサトウキビ使用の特製Dr.Pepperを購入しました(普通の商品は甘味料としてコーンスターチを使用)。で、3時半ごろにオースティンに帰着。短いながらも、普段では味わえないテキサスらしさあふれる旅行を満喫できたと思います。下の写真はウェーコのDr.Pepperミュージアム。

12月19日(火)の夜

 宗教右翼の大物パット・ロバートソンの番組、700 Clubを観ていると、面白そうな本の紹介がありました。今年の11月下旬に発売されたばかりのArthur C. Brooks著、Who Really Cares: The Surprising Truth about Compassionate Conservatismという本で、この中では「リベラルの方が貧困層に対して同情的であると思われているが、保守派の方がリベラルよりもチャリティー活動に多く支出するし、ボランティアをする割合が高い」、「教会に出席する人ほど、収入を募金に当てる割合が高い」、「収入を募金に当てる割合が高いのは、低所得層、高所得層、中所得層の順番である(ミドルクラスはリベラルの割合が高い)」などということが、データ分析を元に主張されているようです。その理由としては「保守は貧困層を助けるのは個人の責任と考えるので、自分の財布からカネを出すが、リベラルは貧困層を助けるのは政府の責任と考えるので、政府にカネを出させようとするばかりで、自分では出さない」とのことです。著者は名門公共政策大学院であるシラキューズ大学のMaxwell Schoolの教授なので、データ分析やデータはおそらく信頼できるものと思われます(ただし経歴を見ると、ランド研究所の大学院でPh.D.取得、2007年はゴリゴリの保守のシンクタンクであるAmerican Enterprise Instituteの客員研究員をやるようなので、保守のバイアスがかかっているのかもしれませんが)。機会があれば実際に手にとってみたいと思います。

 明日、日本に一時帰国します。

12月22日(金)の朝

 昨日の深夜、京都の実家に帰ってきました。オースティンでは機械系のトラブルということで、乗った飛行機を一度下ろされ、結局予定より1時間半遅れて出発。当然予定していたダラスでの成田行きには間に合わず、次の便に乗ることになりました。しかしこの便も天候不良のため約1時間遅れで出発し、成田で大阪の伊丹空港行きの国内線を逃しました。この日はもう成田→伊丹は無いということで、羽田に移動し、そこから関西国際空港へ(成田→羽田のリムジンバス代はアメリカン航空もち)。10時半ごろに関空に到着し、結局実家に着いたのは夜中の1時になりました。オースティンのアパートを出てから余裕で24時間以上。こんなに疲れたのは初めてでした。飛行機の旅行はこういうことがあるから嫌です。

12月31日(日)の朝

 先日、民主党のエドワーズが2008年大統領選挙予備選挙への出馬を表明しました。エドワーズ支持者のメーリングリストでは出馬表明の前日に本人の名前でその旨を伝えるポストがあり、理想のアメリカをつくるために人びとが責任をもち、行動を起こすことを求めていました。出馬表明後すぐに革新系の政治雑誌Nation誌からのメールが届き、「彼は完璧な候補者でもなければ、完璧な革新ではないが」と前置きしつつも支持を表明しました。エドワーズは、これまでに出馬への意欲を見せているクリントン、オバマに比べても最も民主党らしい候補者だと思います。彼を中心にして、アメリカの革新勢力が結集していくのではないでしょうか。今のところは次の大統領に最も近いのはクリントンだと思いますが、エドワーズも今後有力な候補者として名前が挙がってくるでしょう。

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